人間とは

 P・ゴーギャンに、晩年描かれた「我々は何処から来たか我々とは何か我々は何処にいくのか」というふタイトルの絵画がある。十八世紀半ばイギリスに始まった産業革命の波、近代都市パリにもプチブルジョアを生み出し、株式仲介人だったゴーギャンは絵画コレクターでもあったが、突然、絵の制作に目覚め、競争と虚飾にまみれた都市生活の疎外感からか、絵の素材を求めて、遥か遠い、野蛮であっても、輝く美しい原始の姿を求めて南洋タヒチへと全てを見限って越境してゆく。
 夢みてたどり着いた楽園も、現実には文明の余波にさらされ、理想とはいかず、貧困と病いに苦しみながらも、ヨーロッパとタヒチを往復しながら描かれた作品は今日、偉大な遺産として伝えられている。
 第四次産業革命とされる現在、AI(人工知能)による、人智を超えた社会を予告していますが、さらに「シンギュラリティ」という、AIが人間を凌駕する日が、必ず便利で合理化され、スマートな都市生活、仮想空間の利用、それらによって、人間に幸福をもらたすと。
 しかし、現在も美しいリゾートはあっても、人間を 虐殺する戦争、テロは絶えない。かつてゴーギャンが夢見たユートピア、タヒチ、彼の絵のタイトルにならえば、いったい人間とは、何処から来て。これから、何処に向かっているのかという。
 私達、人類につきつけられた、永遠の問いかけではないでしょうか 。
長岡 津慶